女子校出身大学で失敗した話

 女子校とは言え、たったの三年間。六年間、九年間と年月を重ねた方々にとっては、ほんのこれしき、と思われるかも知れないが、たった三年。されど三年。

 女子高に三年間楽しく通った私にとって、異性と同じ空間にいること自体が、どこか異世界のようだった。

 

 そもそも私が女子校への進学を決意したのは、小学校中学校と、女友達がほとんどできなかったことが原因である。いわゆる女子っぽさからかけ離れ、十年近く空手を習いながら生活してきた私にとって、女の子は儚く遠い存在だった。

 お洒落しない、メイクしない、髪は決まってツインテ―ル。おまけに好きなアイドルはももいろクローバーZ。男子に交じってラブライブにはまっていた私に、女子と共通の話題は少なかった。だからと言って男子と馬が合ったかと言われればそうでもないが、どちらかと言えば、男子の中に混ざって腕相撲をしていた方が楽しかった。

 

 女友だちは固定の三人と、後は普通に話して楽しい数人。それ以外は、なんか敵みたいな。なんでか。私の態度がそんなに気に入らないか。という気分。

 

 そんなこんなで女子校に進学し、夢のキラキラJKの日々が始まった。最初に仲良くなったのは、顔は可愛くてお洒落なのに、どこか残念なずぼら。次に仲良くなったのは、顔は可愛いのに異性に興味を示さない清楚系。次に仲良くなったのは、顔は可愛いのにスカートの中から体育着が丸見えの品のない座り方をする変人。

 女友達が沢山出来た。個性あふれる、ゆかいな仲間たち、という表現がぴったりの面々。

 

 見た目は女の子、中身はどこか残念な友だちに囲まれ楽しい毎日を送っていたが、恋バナをした記憶はほとんどない。ずぼらの恋愛の愚痴を聞くことはしょっちゅうだったが、甘い恋愛トークなんてかすりもしなかった。私の周りは、ずぼらを除いて恋愛に没頭する子はいなかった。

 

 それが、私を異性から遠ざけた一つ目の理由。

 中には、駅向こうの男子校に遊びに行く猛者も沢山いたが、私にはそれが出来なかったし、したいとも思わなかった。女だけの空間が、最高の居心地だった。

 

 とは言え、結婚願望だけはご立派に人一倍強かったので、婚期を逃さないべく、私は共学への進学を決意した。

 

 卒業式、それぞれが大学やその他の進路について前向きに話す。級友兼悪友たちとの最後の時間。私と話した友人は、全員が言った。

 

 「はのとはちょろいんだから、変な男に騙されないようにね。」

 

 これが、異性を遠ざけた二つ目の理由。

 

 必要以上に警戒し、警戒心をむき出しにし、大学生活をスタートさせてしまった。女友達はすぐに出来た。みな素敵な子たちで、つくづく恵まれていると思う。一方で、初めてクラスの異性と話をするまでにかかった時間、なんと四か月。何をしているんだか。

 

 英語を学んでいる私は、クラス全員と英語で楽しくコミュニケーションを取った。英語なら、男女関係なく会話が弾んだ。積極的に話題を振ることが出来た。ところが、チャイムが私を現実に引き戻す。一気にネジが締まり、口も締まり、表情も締まった。不愛想で不機嫌な女が出来上がるまでの時間、およそ三秒。

 

 おかげで悪い男には捕まらずに済んだが、男友達は出来ないまま一年、そして二年を終えた。一体何をしたら、ここまで警戒できるのだろうか。異性に何か恨みでもあるのだろうか。私は柳生久兵衛なのだろうか。

 

 

つづく(のか?)