バイトもせずに勉強してたら奨学金を貰えたって話

 学生の本分は勉強。

 なんて言うが、正直勉強なんて二の次の人が多いのは当然だ。大学生は自由。時間も沢山あって、やりたいことを出来る。時間を無駄にすることだって、学生の内にしか出来ない貴重な経験だ。バイトもそうだし、オール飲みだってそう。

 そういうのは、大学生の内に経験しておくべきだ。勿論勉強をするのは当たり前。最低でも、特に志がないのであれば卒業は四年でするべき。だが、それに支障がないなら存分遊べばいい。遊ぶためにバイトをしているのだから、誰にも文句は言われまい。

 ここで海外の話を出して、「海外の大学生は学費は自分で稼いでいる。」なんて言い出しちゃう人はまじでナンセンス。ここは日本。しかも、他人の話を出せれたってウチはウチ、ヨソはヨソ。そんな話をしたい訳ではない。

 という訳で長くなったが、大学生が大学生らしく健康で文化的な最低限度の生活を送りたければ、バイトをしなさいと言うこと。バイトは社会経験になっていいとか、上下関係や礼儀を学べていいとか、言い出したらきりがない。だが、実際みんな何のためにバイトしてるの?「バイトだるい~」と言いながらも働くのはどうして?答えは簡単。遊びたいから。

 一人暮らしとかその他様々な事情がある場合は除いてね。

 やっと本題に入ると、私は大学生になってバイトを一度もしていない。大学生としての楽しみの原点を自分で潰してしまっている。

 バイトをしていないのには理由がある。大学は家から電車で2時間、それに加え毎日朝は5時半に置き、大抵は四限まで授業があるので帰りは19時。シンプルに時間がなかった。
 それに、ギリギリのレベルで入試を突破した大学では、授業についていくだけで必死だった。英語は聞き取れないし、明らかに教養が足りない。

 みんなは普通に参加しているのに、私は置いて行かれないことで精一杯。だから私は、予習復習課題に人より時間をかける必要があった。時間がない中で教科書を読みこみ、不明な点は友人に聞く。

 それから、高校から始めた軽音を続けるため、部活に所属していたことも大きな原因だった。家で練習をしないと間に合わないし、夜遅くまで部活のときもある。

 そんなこんなで、大学に慣れたらバイト始めようと思いながら、三か月が経ってしまった。

 部活は楽しい。好きなことだから、時間に追われてもなんとか耐えられる。部活をしていなかったら、私のストレスのはけ口はどこにもなかったかも知れない。

 授業と部活にほとんどを費やしていたため、バイトどころか、友人と遊ぶ余裕もほとんどなかった。つまり、バイトをしなければいけない環境でもなくなってしまった。

 そして夏休み。恋人が出来た。中学生以来の恋人で、その人はとても優しい。部活の先輩で、すべてを包み込んでくれるような人。そんな恋人は、「バイトなんてしなくていいならする必要ないよ」なんて悪魔のような天使のような囁きをくれた。

 だが、恋人が出来ればデートをすることになる。今まで友人と遊ぶことも少なかった私にとって、初めて金銭面の不安が出てきた。流石にバイトと思い派遣に登録した。でも、そのサイトを使うことはなかった。応募する度に人数の関係で削られ、なんかもういいや、となってしまったのだ。

 という長い言い訳の元、もうバイトなんてやーめた、というどうしようもないゴールにたどり着いてしまった。夏休みはなけなしのお金をはたいて遊びまわっており、その点でもどうしようもない。

 そして九月。部活の合宿が終わり疲れ果てた私のもとに届いた成績。見方も基準もよく分からなかったが、まあ悪くはなさそうなアルファベットが並んでいた。

 それを恋人に見せると、「え?めっちゃすごいじゃん」と一言。あ、そうなんだすごいんだ。やった。

 そこから私の闘志に火が付いた。心を燃やした。なんてね。
 とにかく、後期も頑張ろうというやる気に満ち溢れ、前期よりも成績を上げてやるぞ、という気合で半年間突っ走った。ほとんど、気合だけで耐えていた。

 本当に忙しかった。大変だった。簡単じゃなった。辛かった。でも、私はやるときはやる女。案外頑張れる奴。そんなこんなで乗り越えてしまった。

 そこで届いた成績は、前期よりもさらに良いもの。やっぱり私ってすごいんじゃん、と単純。単純脳だけど、頑張ったんだ、という達成感は間違いなく私の中にあった。自己肯定感の低い私は、こうやって分かりやすく褒められる基準があると喜ぶ。常に誰かに褒められたい。毎分毎秒褒められたい。だけど、褒めてって言えないしアピールさえも出来ない。だから、無条件に褒めてくれる数値は大好きだった。

 二年。コロナ禍で大学に行けなくなり、計4時間の通学がなくなった。そこで私が考えたのは、バイトを始めることではなく、もっと沢山の授業を登録すること。誰に見せても信じてくれないような履修を組んでやった。どうせやることないんだし、授業入れてもいいじゃん、みたいな感覚。

 それと同時に、大学が毎年募集している給付型奨学金に応募してみることにした。総合的に評価して適格と認められた学生に36万円若しくは72万円が給付される。選ばれるのはごく少数だが、ちょっと自信があった。いけるかも、と思いながら、志願書を記入して提出した。

 結果は採用。私の奨学金の口座に72万円が振り込まれた。72万円と言えば、12で割ったら6万円、一か月に6万円稼いだのと同じことだ。勉強をしてお金を貰うなんて、学生としてこれ以上に誇れることがあるだろうか。学生は勉強が本分。で、勉強してたらお金が手に入った。

 そのお金には一切手を付けていない。なんか負けな気がするから。留学そのために借りていた学生支援機構の貸与型奨学金を二年間で停止し、それの返済として取っておこうと思った。とは言え、そっちもそんなに使ってないが。こんな状況で留学できないし。怖いし。

 今の私は、全く働いていないのにお金持ち。でも、お金を貰えたということより、認められたこと、それが嬉しかった。やっぱり私頑張ったんだって思える。努力が結果に結びつく。簡単なようで難しいことだけど、それが出来れば私のスイッチは簡単に入る。

 だからこの一年も一生懸命頑張った。成績は去年よりも上がった。今年だけで取得した単位数は60単位くらい。1単位しかくれない授業も沢山あった。でも、最後まで頑張れた。辛かった。オンラインは、精神的にも肉体的にも辛かった。でも、結果が出た。いい成績。

 きっと私は、三年生の一年間も頑張れる。褒められたいから、頑張る。偉いねって、その言葉が私を頑張らせる。

 本当、単純で良かった。